村上春樹さんの新作短編小説集を読みました。
かつて私は短編小説集が苦手でした。
今、読んでいた物語に必要以上に、のめり込んでしまうので、その物語が終わり、次の物語が始まる時、前の物語が、体内に濃く残っていて、うまく次の物語に入れなかったんです。
だから短編を一遍、読むたびに、数日間の間隔を置く必要があり、一つの短編集を読み終えるのに、普通の人は3時間かかるところが、私の場合は1ヶ月かかるという具合でした。
切り替えがうまくできなかったんです。
ところが、知らないうちに、症状は徐々に改善し、最近では、数分間、目を閉じていれば、次の物語を読めるようになりました。
いつもながらのストーリーテリング。音楽を聞いているかのように、物語は進んでいきます。
タイトル通り 一人称物語ですね。短編では登場人物が少ないのでシンプルに一人称なんだと思います。
どれも素晴らしい作品です。
「謝肉祭」は、導入部から一気に引き込まれました。フックが最高に効いてます。個人的には最良。
「品川猿」は、猿が話すというぶっ飛んだ設定なのですが、これまた違和感なく物語に入っていけました。
「ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles」は、二人の女性が入れ子のように出てくるのですが、一人目の女性を入れることで、一段と不思議な物語になっています。二人目の女性の話だけでも十分面白いのですけど。
自分の中の、固くなった部分がほぐれていくように感じます。
私も知らないうちに、世間にまみれて疲れてるんだな。
こうした短編を読むと、長生きするもんだ。とつくづく幸せを感じます。