またまた心震えるドキュメンタリーに出会ってしまった。
こういう時だからこそ、これを見る意義がある。
再放送あります
BS1スペシャル「マイライフ イン ニューヨーク 」
去年放送したNスぺ「この素晴らしき世界」で取り上げた、NY在住のピアニスト・海野雅威さんの再起を追う。ヘイトクライムで暴行を受けた海野さんは夢を取り戻せるのか。
ジャズの街・ニューヨークでトップをうかがう地位を築いていたピアニスト・海野雅威さんは、2020年9月、地下鉄の通路で黒人の少年8人に、「中国人は出ていけ」という言葉を投げつけられ、15分間にわたって暴行を受け、ピアニストの命とも言うべき右肩を複雑骨折した。まだ傷は癒えないが、この苦しみを音楽で表現しようとアルバムを完成させた。海野さんの苦闘の一部始終を撮影してきた、ディレクターが語る感動の物語。
海野さんは、物静かでおとなしいジャズ・ピアニストです。
暴行に会ったせいかもしれませんが、ニューヨークの街中ではおどおどしている様子でした。一人で街を歩けません。地下鉄にも乗れません。以前はジャズのメッカ、ハーレムに住んでいましたが、治安のいいところに引越しました。
それでも彼は暴行を受けたニューヨークに戻ってきたのです。再生の物語。
アメリカで戦っている大谷くんや松山選手と同じ。彼らに比べると、戦いの規模は小さいけど、その意義と敵はあまりに強大です。
戻った当初は、表情も硬く、悩んでいる様子でした。
状況が変化したのは、亡くなった恩師の奥様を訪ねた時、恩師の遺品ピアノを受け継ぎ、それで思い出の曲を弾いた時、彼に笑顔が初めて戻りました。その曲調も驚くほど軽快。
その後、取り組んだアルバム制作でもポップでハッピーな曲ばかり。
かえって彼の受けた傷の大きさを感じて胸が痛くなりました。
海野さんは街中で立っている黒人を恐れていました。でも黒人に対して恨み言を言うのでもなく、黙々と黒人たちと一緒にジャズを作り続けていました。
恩師の奥様もそうですが、ジャズ仲間たちが、彼の再生を支え、あの黒人暴行事件、フロイド事件の弟、フィロニス・フロイドさんを紹介しました。
よくスポーツ選手がチームのために頑張りました。と言ってますが、私はきれいごと。ファンサービスだと思ってました。しょせん自分の成績が一番大切。
アーチストたちは、海野さんを支え、ライバルの再生を心から願っている。ほんとに大変な時、本気で戦う時には、仲間は重要な価値を持つんだなぁ。
演奏シーンは、傷ついたアーチストの苦しい再生を思い起こさせ、静かに心の底を打ちます。必見。