NHK Eテレ 6月9日(日)午後8:00〜午後8:45(45分)
奇想をテーマに忘れ去られていた伊藤若冲などの画家の特集が行われました。この特集を通じて、若冲の凄さやその位置づけが理解できる内容でした。
この特集の中心にあったのは、辻惟雄氏の著書『奇想の系譜』(ちくま学芸文庫)です。この本では、伊藤若冲を始めとする奇想の画家たちの魅力が詳しく語られています。若冲が再評価され始めたのは、アメリカ人収集家ジョー・プライス氏がきっかけでした。2006年に東京国立博物館で開催された「プライスコレクション『若冲と江戸絵画』展」で一気に脚光を浴び、2016年春の東京都美術館での「生誕300年記念 若冲展」で不動の人気を得ました。
私が若冲を知ったきっかけもこの展覧会でした。その後、ユニクロのTシャツやステテコに若冲のデザインが取り入れられ、私も愛用していたので、若冲の作品に親しみを感じています。後年、注目されるようになったのはゴッホにも通じるものがありますね。
研究によると、若冲の作品にはシュルレアリスムに通じる要素があるそうで、もしそうなら、彼は世界初のシュルレアリスムの画家だったのかもしれません。鎖国だった江戸時代の日本の絵師と、100年後にヨーロッパで流行したシュルレアリスムが同じものを描いていたというのは、非常に興味深い現象です。
若冲の細部へのこだわりが凄いのは、自閉スペクトラム症という病気のせいだという説もあります。だからこそ、あのような多くの作品群が生み出されたのかもしれません。当時の最高品質の絵具を使用していたため、200年経った現在も保存状態が非常に良いそうです。このこだわりも若冲の気質によるものかもしれません。
特に面白かったのは、『奇想の系譜』の著者、辻惟雄さんがこの本を紹介していた部分です。辻さんは、若冲の作品とフェルメール、そして現代アートの3色の使い方が共通していると指摘していました。これが小学館の『図鑑NEOアート 図解 はじめての絵画』で紹介されているのです。小学生向きの本ですが、私も欲しくなってきました。