100人程度しか入らない小さな映画館で観客は8人でした。
でもびっくりするくらい良かった。
調べてみると1996年に発表され、今回、リマスターで再演。
こういう映画の良さがわかるようになってきました。
大成功する作り手がいる一方で、しない人もいる。っていう簡単にお涙頂戴にできる単純な図式なんだけど、淡々と映像化しているからこそ、よりリアルに感じられます。
キャスティングがすばらしい。
寺田ヒロオ:本木雅弘
安孫子素雄:鈴木卓爾
藤本弘:阿部サダヲ
石森章太郎:さとうこうじ
赤塚不二夫:大森嘉之
森安直哉:古田新太
鈴木伸一:生瀬勝久
つのだじろう:翁華栄
手塚治虫:北村想
石森の姉:安部聡子
つげ義春:土屋良太
棚下照生:柳ユーレイ
藤本の母:桃井かおり
娼婦:内田春菊
編集者・丸山:きたろう
寺田の兄:時任三郎
25年後に売れっ子になってる俳優たちが、総出演しています。このキャスティング見るだけでも面白いです。
当時売れっ子だったはずの人がちょい役で、メインキャストが無名の俳優っていうのがいいです。
赤塚不二夫:大森嘉之さんはうまいですね。参ってしまいました。
森安直哉:古田新太さんも、この頃から演技がうまかったんだ。
娼婦:内田春菊って。。。
本木さんもよかった。市川監督が本木さんは情けない佇まいがいい。って言ってた意味がわかりました。そして本木さんのラストシーンは印象的ですね。さらっと撮ってて、押し付けがましくなくてとてもいいです。
ノーナレーション。説明なし。全てが暗示的。
「寺さんは人が良いから」「人が良すぎるんだよ。」「また来いよ。」「もう来ないよ。」
なんて最高でした。
余白がたくさんあって、想像の余地があります。すべてを語らない。
優れたパーカショニストはいちばん大事な音を叩かない。それと同じことです。(村上春樹®)
毎日、ブログを書いている身ですら、作り手の世知辛さは、身に詰まされます。
調べてみると、寺田さんはこの後、精神失調をきたしているようです。
そりゃそうですよね。才能の怪物みたいな人たちに囲まれて、それでいて兄貴分だから見本にならないといけない。毎日背筋を伸ばして生きないといけない。でも不器用だから時代に馴染めない。「寺さんは人が良すぎるんだよ。」ですね。