幸せなことだけをして生きていきたい

日常で考えたことを、「14歳の私」に伝えたいコトを書いています。もっと失敗しろよ。

ハードボイルド小説はロンググッドバイ以来かな

この密やかな森の奥で

素晴らしい小説です。おすすめ。

 

 

きっかけはフミコフミオさん。@Delete_All

delete-all.hatenablog.com

 

彼がこの感想文を書いた理由が解りました。

 

「この密やかな森の奥で」は、そのストーリーテリングが素晴らしく、淀みのない展開が魅力的です。読み進めるうちに、すらすらと最後まで導かれ、ミステリーとしても全く破綻がありません。すべての伏線が見事に回収される気持ちよさがあり、完璧な小説と言えます。

 

物語の中で描かれるのは、PTSDを抱えた帰還兵のハードボイルドな姿。しかし、ランボーアメリカン・スナイパーのような「焼き尽くして終了」というお決まりのパターンではなく、独自の展開が魅力です。気に障る隣人、スコットランドの不気味さが際立ち、読者の興味を最後まで引きつけます。物語は単なるお涙頂戴で終わることなく、余韻を残す作品です。

 

主人公は、過去の過ちや幼い娘という弱みを抱えつつも前進していきます。その姿は尊敬できますが、煩悩から抜け出せない人間らしさも愛おしく感じます。そして、最後には自分の人生と引き換えに正しさを選ぶという苦渋の選択をする葛藤の様子は、現実的な視点から見ると馬鹿げているかもしれませんが、この主人公の青臭さならではの展開として納得できます。

 

アメリカでは退役軍人は街のヒーローとされますが、日本では戦争に行ったことすら語られることが少ないです。私たちはもっと彼らをリスペクトすべきではないでしょうか。今の状況では全然足りない気がします。

 

「この密やかな森の奥で」は、様々な思いを呼び起こす作品です。心からおすすめします。