「僕はプロローグが嫌いだ。そして新人作家がやるもう一つの失敗は第1章で20人の人物を登場させること。」
このフレーズだけでも含蓄がありますね。
もちろんこの小説にはプロローグもないですし、第1章で登場する人物は20人未満です。
最初のページで紹介されている主要登場人物は22人。私が思い出せる登場人物は50人。実はちょい役で弁護士が出てきますが、この辺まで入れると100人を超えます。
しかも各章ごとに主人公も変わり、場面もころころ変わります。ストーリーも複雑です。
それでも勢いのあるストーリーがしなやかに流れ、混乱することもありません。
しかも400Pという短さ。説明的でなく押し付けがましくないのに、これだけの情報量が自然に入ってくる。さすがグリシャムですね。うまい。
この秘訣は、一つは時系列で書いていること。そしてもちろんこれだけの人数をさばくとなると3人称。ってとこかな。これを守ってもこんな書き方はできないですけど。
本屋、本、そして作家がたくさん出てくる。本好きにはたまらない。
スイスイ読めます。村上春樹さんが読み始めたら止まらなくなった。と書いてますが、ほんとにその通り。
そしてこの本の最大の魅力は、最も重要な登場人物で、記事冒頭のセリフを言った書店主です。
誰よりも読書家で、プレイボーイで、書店経営のコツを掴んでいます。
ギャッツビーみたいです。私も魅了されてしまいました。こんなふうになりたい。
数十年前ですが、出てくる街(有名都市ではありません)のいくつかに、私は実際に行ったことがあり、そのせいで、その街の喧騒や匂い、風までも思い出すことができました。
原題のカミノアイランドは架空の島のようです。
続編、Camino Winds/ by John Grishamもあります。
まだ翻訳されてないですね。Kindle版 (電子書籍) ¥685!!
洋書に挑戦してみよかな。