アラブの春の誤解
エジプトで起こった「アラブの春」についてのドキュメンタリーと本の感想です。
まずドキュメンタリー
エジプトでアラブの春を起こした若者たちが、今、何をしているのか?
10年前、若者たちは自由と民主を掲げ、政権を転覆させました。しかしその後の混乱が長引き、結局、軍部が政権を担っています。長引く混乱で国力は落ちていく一方です。
密着取材した一人の若者は、今は国会議員になり、体制側について仕事をしています。おかげで裕福な平和な生活を送っています。自由を語っていたのに、今は政権に批判的な言論を取り締まる立場です。「状況は変わったのだ」という言い訳をしていました。
この番組では、かなり批判的に撮影しています。
一方、反政府活動をし続ける若者もいます。政府側から逮捕されそうになり、家族をエジプトに残し、一人で亡命しました。戦い続けると言っています。
これを見た後は、自由対独裁の構図で、独裁が勝利し、「アラブの春」の夢は終わってしまったんだ。と思いました。
でもこの本を読んで、そんなに簡単なことではないこと、政権側に寝返った若者にも正義があること、に気が付きました。
せっかく頑張って「アラブの春」起こしたのに、生活はさらに苦しくなった。これなら元の独裁政権のほうがましだった。
二度のクーデターで、エジプトにも一度革命を起こすような体力はもう無い。国民は疲弊しきっている。
だから、とりあえず経済復興を優先し、経済復興しやすい独裁政権でやっている。自由は食べれるようになってから。
これ何かに似ている。
そうだ。戦後の日本だ。戦後復興を成し遂げた歴代首相たちのよう。
戦後保証だとか、自国憲法だとか、再軍備だとか。いろんな問題があったにも関わらず、経済復興をまず進めて、今の日本を作った。
最初は、政権側に寝返った若者を批判的に見ていましたが、この本を読んだ後は、全然違う気持ちになりました。
ほんと正義って何でしょう?
こういうことを知ると、「私は正しい!」とか言っている人の薄っぺらさを思い知ります。
「教えて! 尚子先生 中東・イスラムってなんですか? (altbooks)」
にはシリアの混乱の原因についても的確に書かれています。
世界史好きにはおすすめ。
抽象度が上がります。