王者・井上尚弥の10ラウンド
私は負けず嫌いなので、試合には勝ちにこだわってしまいます。
学生時代はテニスをしていましたが、格下には確実に勝つけど、同レベルとの試合はことごとく負けてました。
負けたくないという気持ちが、さらに自分を追い込んで、硬いプレーになっていました。
おそらくこのお二人はそういう気持ちと戦っていて、その気持を分かち合っていたのだろうと思います。ある時点でそれを乗り越える瞬間がある。
でも井上尚弥選手は全く違います。
最初から完全に試合でパフォーマンスを出し切っている。
そういう次元で戦っていない。試合で高いパフォーマンスを出すのは当たり前。その先で、どんな戦いをできるのかまでも楽しんでいる。
先日の4団体統一戦でも、試合中に笑っていた。
これは相手がすごいパフォーマンスをし、こちらもそれに対して高度なパフォーマンスで応じたことで、二人で笑ってしまった。と言ってた。
こんな人がいるんだ。
どの試合よりも緊張する一戦。
チーム井上は数十人の大所帯だった。その人々の生活を背負っているのに。
しかも前評判は井上圧勝だったのに。
相手が想像以上のパフォーマンスを出してきて笑うって。
勝ちたくて固くなる。と次元が違う。
きっと大谷くんもそれだ。
前半はメンタルの話で、後半はテクニックの話。
ボクシング試合中では解説されていないことを、録画映像スローモーションで細かく解説してあった。笑うシーンもこれ。
十年前に見た長谷川穂積選手のドキュメンタリーでも戦術技術の解説がされてたけど、当時とテクニックの高さ、深さが全然違う。
知らないうちにボクシング界は、大きく進化していたのだな。
こういうところをもっと深く解説する番組があれば、ボクシングはもっと盛り上がると思う。
相手選手のディフェンスの上手さを評価し、ラウンドや形勢に応じてディフェンスを変化させていることを解説していた。こういう細かいところは録画でじっくり見ないとわからないし、あの試合中にそこまで考えていることに驚き。
試合中に冷静に相手デフェンスの上手さを評価して、それに対応していく井上選手もすごい。
そして相手の形勢が不利になってきて、相手は一発逆転のカウンター狙いへ戦術を変えていく。
そこで井上選手は時間稼ぎすると安全に判定で勝てるのだが、あえてKOを狙いに行く。それはカウンターを食らうリスクがあるのに。
そして実際にカウンターをもらってた。
しかし井上選手の攻撃パターンがその前のと変化させていたことで、カウンターの力を逃すことができて、致命的なものにならなかった。
相手選手もあれが入っていたら勝ってたと言ってた。
しかし結果は紙一重で井上選手。
そういう試合だったんだ。
前評判から井上選手は苦戦だったんだな。と考えていたが、実はパフォーマンスはどちらも最高だったんだな。